2009年7月10日金曜日

鏡の中のマリオネット

2009.7.8

 久しぶりの芝居行き。16時から道頓堀松竹座にて、「NINAGAWA 十二夜」を鑑賞。前から5列目のほぼ真ん中。

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 菊五郎・菊之助親子の2役早替わりは見事なものだ。とくに菊之助丈扮する双子の兄妹、斯波 主膳之助(しば しゅぜんのすけ)と獅子丸〜実は琵琶姫の衣装替えの早いこと。芝居が進むにつれ、着替える時間がだんだん早くなり、最後はふたりが一度に登場する(?)マジックまで披露。袖に引っ込み、衣装を替えて、次に出てくるまで、数えてみたら、最短で20秒くらいか。時間との勝負。舞台裏は、さぞや慌てふためき、ときにテンテコ舞いしているに違いない。本人は、男の声、女の声、中性的な声の3つを使い分ける。至難の業だ。お父さんの丸尾 坊太夫と捨助(すてすけ)も同一人物とは思えないほどのキャラ作り。それをサラッとやってしまうところに、親として、師匠としての重みが感じられる。
 歌舞伎とシェークスピアと蜷川ワールドの融合。バックサイドに鏡を使っているのも、似た者同士を意味している。
 また、亀治郎さんの麻阿(まあ)もよかった。あの人のハマリ役だ。左團治・翫雀・團蔵各師のオバカトリオも笑いを誘う。そして、なんと言っても、時蔵さんの織笛姫(おりぶえひめ)にはホレボレした。あの、酸っぱいものを食べたときのような表情がたまらない(わたし流の褒め言葉)。
 蜷川幸雄氏の芝居は、過去に「近松心中物語」「新・近松心中物語」を観たが、やはりこの方独特のにおいがする。これぞエンターテーメント。今回はコメディタッチであったが、どの作品にせよ、観ながらにして、芝居の中にグングン引き込まれていく様が自覚できる。古典歌舞伎とは、また違った感覚である。隣に座り合わせた6歳くらいの子どもがゲラゲラ笑っている。周囲のおばさんたちも終始大笑い。こんなに面白く仕立てた歌舞伎は初めてだ。

 その余韻に浸りつつ、阪町の「九州八豊やせうまだんご汁」へ。城下カレイ、関アジ、鱧の天ぷら、馬刺三角ロース、たてがみ、やせうま汁……ううん、いい芝居のあとに、いい料理。そして、ほのぼのとしたおかみさんの笑顔も、またいい。至福のときである。お酒は福来、大吟醸八鹿、吟醸万年山をいただき、ほろ酔い加減で帰路についた。
 いやあ、今日はほんとに楽しかった。